ティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』を読みながらうとうとしてたら、悪夢を見て起きました。車止めくらいある巨大な角を持った、ヌメヌメと黒光りする牛にどこまでも追っかけられる夢。悪夢って最強の目覚ましですね。
この本は二ヶ月くらい前に下北の古本屋で買ったまま、アルバム仕事が一段落するまで積ん読してました。誤解を生む表現かもしれないけれど、すごく面白かったです。*1
オールタイムフェイヴァリットの映画にヴェト物が多い僕としては(地獄の黙示録フルメタル・ジャメット、ジェイコブズ・ラダー、etc)たまらないものがあった。こういう小説や映画作品に触れるたびにいつも感じることなんだけれど、ベトナム戦争には第二次世界大戦までの戦争とも、また湾岸戦争や今回のイラク戦争とも、本質的に異なる・・・戦争という舞台装置が持っているロマンティシズムの側面を、宿命的に刺激する何かがあると思います。生命を賭して闘うことへの憧れを刺激する、ヒリヒリとした何か。
もちろん戦争を全面肯定する気は無いし、ティム・オブライエンもコッポラもキューブリックだってそんなつもりはないはずです。ただ彼らは戦争を・・・ティムの言葉を借りれば「物語化」することを躊躇しない。無慈悲な殺戮の中で東洋と西洋が対峙し、ナパーム弾の閃光の中で溶け合っていったことを、戦争の美的な側面として描くことをやめなかった。
たとえばセレブリティの退廃的な死、カーレースのクラッシュ、野生の動物たちが狩りをする瞬間といったさまざまなフーテッジ。そういうものを目にした時の、残酷で甘美な感覚が、ベトナム戦争には潜んでいるような気がするのです。ロマンティシズムは厳しい現実に対峙するためのトランキライザーであり、ブドウ糖であり、塹壕であり、オーケストラピットでもあります。そしてその効果は僕らが今、まさに従軍している戦場においてもハッキリと認めることができます。

ちなみに僕はこの本(ハードカバー)を100円で買いました。アマゾンなんかでも平均して200円くらいで手に入ります(文庫もハードカバーも)。日本のタレント小説家(ワイドショウとかによく出ているニヤケ顔のあいつとかさ)が三時間くらいで書いたような本に2千円弱の金を払うなら、絶対にこちらを買った方が良いです。10冊買って配ったって良いとすら思います。
さて書籍と言えば。おかげさまで「レコード・バイヤーズ・ダイアリー」の重版が決定しました(パチパチパチ)。いやあ、めでたい。現在、一部で多少手に入りにくくなっておるかもしれませんが、年内には全国ツアー中のワタクシ共々、この重版分が出まわります。きっともうすぐボーナスとか出るんですよね?(いいなあ、ボーナス。なに、そのシステム) ネット書店のショッピングカートに入れっぱなしのあなたも、この際ポチッとヨロシクお願いします。
また、今日は関西から友人が上京し、ちょっと面白そうなプロジェクトについての打ち合わせをしました*2。うまく事が運ぶと、来年の最も大きな仕事になるかもしれません。楽しみだな。いずれ詳しく話すときが来ると思うので、心のどこかにブックマークしておいてください。では。

*1:ワクワクしたし、ドキドキした。と、同時に悪夢を見るほど恐怖したわけですが。僕は昔、わりに優秀なボーイスカウトでした。その頃に経験した数々の野営(ナイロンポンチョと最小限の食料、サバイバルキットだけを持って、四国山中でビバークした経験もあります)の中で知った、夜露に濡れた草花のムッとするような甘い香り、湿ったテントで過ごす夜の闇、年齢差を超えた友情といった記憶の一部を、思わずたぐり寄せてしまうのかもしれません。

*2:僕の大好きな藤沢名店ビル内のこの喫茶店で。