昨日の朝日新聞報道ステーションなどで大々的に特集された卜部侍従の日記。ひさびさに文章で胸が熱くなりました。ちょうど「カフカ事典」という本を読了したばかりだったのですが、フランツ・カフカの生涯は今や何年何月何日の何時に、彼がなにをしていたかまで解明が進んでいるらしいんですよ。それというのも、書簡集だけで本が何冊も出るほど筆まめ&日記まめだった彼の性格と、そして手紙を送られた友人や恋人たちがきちんと保存・・・いや、保存じゃ表現が甘いな。第二次世界大戦の戦火やナチスによる強烈な迫害の中で、ある人は友人へ託し、ある人は荷物に隠して国外へ亡命するなどして、命がけで貴重な手紙類を守り抜いたおかげなのです。
もちろんカフカの文学者としての評価は彼の死後、特に戦争後に高まったわけですが、誰に指図されたわけでなく、まだほとんど無名の文学者だったカフカからの手紙を後生へ残そうと、一様に決死の行動したことはとても不思議な気がします。*1

すべての日記は他人に見られる運命にある・・・というのは誰の言葉だったか忘れましたが、昭和天皇に仕えて以来、欠かすことなく三十年以上つけられたという卜部日記もまた、ところどころに紅い線で強調した箇所があったりするところを見ると、将来、公にされることを意識しながら書かれていたのでしょう。菊のカーテンと呼ばれる強力なバリヤーのせいで、皇居の中の日常がナマナマしく語られることは殆どないわけですが、もっとも身近で接した人物が残した貴重な日記を読むにつけ、天皇という特殊な立場で生きる人であろうが、僕らのような市井の人間であろうが、日々の営みというのは等しく重く、価値があるのだとあらためて思うのです。自分のアルバムに「JOURNALIZED」というタイトルを付けたのも、まさにこうした思いからなのです。

そういえば菊のカーテンで思い出したのですが、エリザベス女王が数十年来のアーセナルファンだという報道がありましたね。たしかに先日アーセナルの面々がバッキンガム宮殿に招待され、エリザベス女王に拝謁している光景をテレビで見ました。セスク・ファブレガスが「女王は僕がだれかってことをちゃんと認識していたよ!」と語ってたので、ただのリップサービスではなさそうです。この写真の女王を見ても、表情から好意の大きさが伝わってきますね。今のローマ法王ベネディクト16世バイエルンミュンヘンのサポーターだし、他にも元首クラスの人たちが特定のチームのサポーターを公言するなんて、我が国以外じゃよく聞く話。イタリアには首相の立場でACミランの会長をしてたベルルスコーニなんてスゴイ人もいる。日本の政治家にもそういうことをできる人が出てくればいいのにね。浦和レッズのオーナーで厚生大臣、とかさ。*2

*1:カフカの三人の妹たちはユダヤ人収容所で亡くなり、恋人の何人かもまたホロコーストの犠牲になっています。

*2:卜部日記には、昭和天皇が卜部侍従に「絹の家(1975年放送の昼ドラ)を見ていいか尋ねた、という記述があって微笑ましかった。