気になるニュースをふたつ。
アメリカで今、ネットラジオが熱いのを皆さんは知ってますか? 熱いといっても残念ながらこれは悪い方の盛り上がり。一向に改善されない著作権上の諸問題がハードルになって、自作曲ですらおちおちネット上で流せない日本と違い、アメリカのネットラジオはコンテンツの充実度、多様性の両面で百歩も千歩も先に進んでます。ボク自身、新しい音楽との出逢いはもっぱらアメリカ発のネットラジオが中心で、たとえば元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンのように、自前のネットラジオ局を持つアーティストすら出てきているのです。
Radio davidbyrne
http://www.davidbyrne.com/radio/index.php
くだらないおしゃべりもなく、彼が選んだ素晴らしい音楽が24時間ノンストップ、しかもiTunesなどを通して無料で聞けるなんて、三度の飯にヘッズが欠かせないボクのような今野雄二フリークには夢のような世界です。*1
なにゆえこのような自由度をアメリカのネットラジオ局が獲得できているかというと、そのもっとも大きなファクターは楽曲使用料の安さにあります。規模の小さな放送局では売上の12%を収めるだけでよいそうなので、地元のバーベキュー屋かなんかのバナー広告で月に一万円しか収入が無い放送局なら、1,200円を払えば音楽を放送できる計算になりますが、おそらく現実には最低額が設定されているはずので、非営利の局などはその金額を納めているはず。とにかくまあ非常に少ない負担で運営できていることは間違いないでしょう。

しかし、先月の17日にワシントンで開かれた「Copyright Royalty Board(著作権料審議会)」において、これまでの使用料を一気に四倍にハネ上がることが決定し、その使用料の支払期限が5月15日になっちゃったから、さあ大変。
AOLとかヤフーミュージックみたいな大規模な局から小さい局まで、全米のネットラジオは「CDが売れなくなったから、代わりにこっちから絞ろうって、そうはいくか!」と大同団結。「セイブネットラジオ」というHPを立ち上げ、そこからさまざまなステートメントを発信中。なにやらPSEとか輸入盤CDの規制騒ぎを彷彿とさせる展開。とりあえず今月15日から60日間、すなわち7月15日へと支払期限を延期させることには成功したようです。*2

先ほど名前を出したバーンもこの問題について、ニューズウィークのインタビューへ答えてます。
曰く「ボクは月に2000ドルほどの維持費を使ってるんだけど(非営利なので、おそらくバーンの自腹)、Royalty Boardの勧告に従えば、さらに20%くらい金を余計に払うハメになる。でも、SoundExchange*3やRecording Artists' Coalition*4が訴えてるように、音楽家が(今のレートによる徴収が続くことで受ける)損害というのは大した問題じゃないと思う。たしかに曲がたくさん流れれるほど、それだけ使用料は増えるかもしれないけど、僕の経験から言って、実際、それによって増えていくのは僕らの作品を知る人たちなんだよね。で、それがアルバムの売り上げに反映されていくのさ」。

ボクはバーンほど音楽でバーンと稼げてないですけど(苦笑)、それでも言いたいことは彼と同じです。まず作り手という立場において、ボクの音楽に対してお金を払って聴いてくれる人には少しでもそれに報いたい。と、同時に自分の音楽だけでなくすべての音楽を含めて、よい紹介者でありたい。DJ、編集者、ライターとして。時にはテレビやラジオ、トークショー、ブログなんかを通して。ボクが音楽という素晴らしいアートフォームから得たものを少しでもいいから還元したい。アメリカのネットラジオにはそういう志、善意なんかを強く感じますし、日本でもそういったシステムが早急に整備され、音楽を取り巻くすべての人が報われるようになればいいなあとひそかに願っています。

ネット上の善意に絡めて、もうひとつ。
最近話題の「分散コンピューティング」をボクも始めました。*5
Macユーザーもオッケーの「BOINC」というアプリケーションを利用し、現在はRosettaというプロジェクトに参加しています。RosettaはAIDSやSARSアルツハイマーなど遺伝性の難病と取り組んでいるワシントン大学の医学チームが運営していて、そういった疾患のシステムを解明するためのタンパク質に関する計算を肩代わりしているのですが、きっかけはやはりDJネグリジェさん。ごぞんじのように、彼の病気もタンパク質とは抜き差しならない関係。このような研究がすぐさま彼の治療に結びつかないにせよ、こうした研究が他人事ではなく、いつか誰かを・・・もちろん自分や家族や友人の身を救うことになるかもしれないと考えたからです。*6
理屈は後回しで、まずはアプリケーションをインストールし、簡単な登録や設定をするだけですぐに参加できます。仕事で一日中パソコン立ち上げっぱなしの皆さんなんかにはホントオススメです。気軽にぜひ参加してみてくださいね。*7

詳しくは下記のHPを参照。

Protein structural analysis room Japan(Rosettaの解説もここにあります)
http://wiki.livedoor.jp/refler/d/FrontPage
BONIC in Japanese
http://boinc.oocp.org/indexj.php
Rosetta@home(英語です)
http://boinc.bakerlab.org/rosetta/

*1:今、このブログを書いてる瞬間にはバーンが選曲したNino Rotaの二時間にわたる特集が放送されています。そのせいで文体が多少トマト風味になっているかも。ほかによく聞いているのはWWOZというニューオリンズのラジオ局。ボブ・ディランがレコーディングでN.O.に滞在してたとき、毎晩ここの番組を聞いてたって自伝に書いてた。ドクター・ジョン、プロフェッサー・ロングヘア、ネヴィルスなどに混じって、地元の名もない(もしかしたらあるのかも)ブラスバンドの曲がかかったりしてゴキゲン。ここを聞きながらストレッチしてると体が良く伸びます。

*2:そしてこの二ヶ月という猶予を使って、議会を調停役に事態の打開に励む模様。と、いうのも著作権料審議会ってたった三人らしいんです。どういうところから息がかかったメンバーなのかはわからないけど、なんだかスゴイ話。

*3:ネットラジオ局から使用料を徴収している非営利の団体。

*4:音楽アーティストの権利保護を推進するための組合。元イーグルスドン・ヘンリーシェリル・クロウが設立に関わっているそうです。

*5:自分のコンピュータの空き容量を使って、スパコンを使わないとできないような難しい計算をネット上の有志が分業でやるのが「分散コンピューティング」です。PCだけでなく、家庭用のゲーム機から参加できるプロジェクトや、賞金が出るようなプロジェクトもあります。詳しくはWikipdeiaなどで調べてみてください。

*6:P2PやFileShareに対する諸問題を打開するポイントだって、結局こうした意識を利用者が持つことから始まるんじゃないんですかねえ。

*7:ちなみにBOINCにはチームで参加できるシステムがあります。ボク主宰でTeam Negligeeというのを作ってあります。現在参加者はまだボクだけです。ぜひそちらにもご参加下さい。