エリザベス・ビショップというアメリカの詩人を知り、一瞬で好きになった。
何年か前、映画「イン・ハー・シューズ」の劇中に彼女の「一芸(One Art)」という詩が引用され、注目されたようですが、日本では選集が一冊出されているだけの、いわば知る人ぞ知る存在。
1911年イリノイ生まれ、1979年にボストンで死去。生涯で出版した詩集はたった四冊で、残した詩は114篇という寡作の人でした。そのかわり一作一作にかける集中力は半端なものじゃなかったようで、代表作である「The Moose」に至っては、完成に二十六年を費やしたとか。
生後八ヶ月の時に父親が他界、母親はそのショックで精神を病み、五歳の時に離別。親類の家を転々とし、詩人として独り立ちした後も、アルコール中毒に苦しみ、恋人(彼女はレズビアンだった)と生活を共にしたブラジルとアメリカ各地を往来するなど、その生涯はかなりワイルド。*1
カーヴァーの文体を思わせるどっしりしたトーンがあって、長めの詩などは特に、短編小説を読み終えたような余韻がある。
2001年に出版された「エリザベス・ビショップ詩集 (世界現代詩文庫)」は、少し訳文が堅すぎる気がします(作品の選び方のせいかもしれません)。もうすこし読みやすい言葉に起こされた、彼女の全作品が翻訳出版されることを望みます。
ということで、前掲書に収録されてなかった作品をぼくが訳してみました。*2
この詩の舞台はニューヨーク。タイトルの「Trouvee」はフランス語で、英語で云えば「Found」です。

Trouvee

こんな夏のさなかに
これまたどうして雌のニワトリが
ウェスト4thストリートで
踏みつぶされたのかしら?

それはまっしろい雌鳥だった
今じゃ赤と白の、ってことだけど
どうやってこんなところに来て、
どこへ行こうとしてたのかしら?

羽は道路一面にちらばり
タールの上でぺっちゃんこ
泥まみれで、
ティッシュペーパーみたいに
うすっぺらくなってた。

哀れな家禽じゃなくて、
鳩やスズメなら
こんな風になってても不思議じゃないけど。

夢を見たんじゃないかと
ちょうど今
見に戻ってみたら
やっぱりそこに雌鳥はいた。

まるで
しゃれた田舎のことわざが
チョークで描かれてるみたいに。
(くちばしは別として)

*1:本能の赴くままに、社会の常識や周囲の迷惑などかえりみず、とことんインモラルに生きた女性アーティストには、なぜかワケもなく惹かれる傾向があります。できればキリキリ舞いにされたい、みたいな(苦笑)。

*2:意訳に近い箇所もありますが。