さて、あらゆる場所がコンビニエンスストアの灯に照らされ、いずれの秘境でも携帯は通話可能であり、すべての知識がwikipedia的な整合性を求められる現代においては、語るべきストーリーさえ、三行以内でたやすく訳せないと「破綻してる」だのなんだの、浅薄な輩に断罪されてしまいます。そしてつい先日、日本映画専門チャンネルで放映された「チロルの挽歌」を見ました。
山田太一の脚本、高倉健が主演。1992年制作のNHKドラマで前後編あわせて三時間。
舞台は過疎にあえぐ北海道の町。市長(河原崎長一郎)は閉山した炭鉱の跡地を、ミニチュアのハウステンボスみたいなテーマパークにしようと画策中。そこへ東京からテーマパーク開発担当のサラリーマンが単身赴任してくる・・・それが健さん
で、実は長年にわたる「不器用ですから」な健'sアティテュードに嫌気が差して、男(杉浦直樹)と駆け落ちした妻(大原麗子)がその町に暮らしていたから大変。商店街の世話役(金子信夫)や開発に反対する地主(岡田英次)、東京からやって来た健と麗子の実娘(白鳥靖代)を巻き込んでの大騒動に発展する・・・というのがざっくりしたあらすじ。
ドラマの終盤に、上記のお歴々が一堂に会して、別れるだの、よりを戻すだの、東京に戻るだの、どこかへ消えるだのと丁々発止のやりとりを繰り広げ、そのスリリングさに胃がキリキリしたのもつかの間、突如「超常現象」が発生!!*1
いやあ、アゴが外れるかと思った。今だったら"炎上"必至のむちゃくちゃな展開に唖然。でも、きっと15年くらい前までは、そんな「唖然」を受け止める余裕と感受性が、視聴者にもドラマ制作者にもあったんだね。
これこそ「きっかけなんかどうだっていい」のココロ。
いかに人気俳優を取りそろえ、ベストセラーを原作にしようとも、まるで見る気がおきない日本のTVドラマですが、こういう良質かつアナーキーな作品を見直してると、やっぱり今のドラマなんか見なくてもいいやって思えてきます。

チロルの挽歌-全集- [DVD]

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*1:山田太一作品の「超常現象」に関して、詳しくはこんなページで。
http://members.jcom.home.ne.jp/0512573101/page082.html