昏睡状態に入る前、ひさしぶりにDVDで見直したのが「未知との遭遇〜Close Encounters of the Third Kind(以下、CE)」。
日本公開が1978年の2月なので、ちょうど今年で30周年。ぼくが劇場で見たのはつまり8歳の時。
遅れること約半年、78年7月1日(誕生日!)に、ようやく全国公開されたスターウォーズを見るわけだけど、アメリカでの公開順はSW(77年5月)→CE(77年11月)だった。つまり完全に逆なんだよね。
SF映画におけるニューシネマというかヌーヴェルバーグ的な作品である、SWの洗礼を受けないままで、CEを先に見ることとなった、幼き日のぼくとしてみれば、予告編やポスターを見ても、ワクワクするというよりかは、木曜スペシャルのUFO特集(矢追純一)や、お昼のワイドショーでやってた「あなたの知らない世界(新倉イワオ)」を見るときと同じ、ヘンなドキドキ感があったのを覚えています。
現実感はあれど「銀河のどこか」が舞台のスペースオペラ=SWに対し、現代のアメリカ中西部が舞台になっているCEを先に見たことで、8歳のガキが深層心理レベルでどちらに大きな洗礼を受けたかというと、まちがいなくCEの方だったろうな、と今では理解しています。
スピルバーグ自身も飽きずに何度も手を入れているCEですが*1、SFXの技術レベルもまだ発展途上。脚本段階でも紆余曲折があり、構想期間が長かったわりに、撮影や編集はドタバタで、仕上がりもかなりラフ。
主役のキャスティングも、スピルバーグが当初イメージしてたのはスティーブ・マックイーンジャック・ニコルソンアル・パチーノ。前作「JAWS」で組んだリチャード・ドレイファスに決まったけど、全員にフラれたから、仕方なく元カノに戻ったようなかんじ。フランス人学者を演じたフランソワ・トリュフォーのように、別の意味で"大物"も出てますが、いわゆるスターはひとりも出てこない。
幼いぼくがドキュメンタリーのような気分でこの映画を体験してたとしても、まったく不思議じゃないというか。そのなんともいえない「生々しい」感覚と切り離すことなく、CEを見直すことは、一生できないでしょうね。

★★★★★★★★★★

余談ですが、ボーナスディスク(01年リリースのデラックスコレクターズエディション)収録の削除シーンを見てて、今までずっと合点がいかなかったシーンが、30年目にしてスッキリしました。一応、メモしておきます(ネタバレとまではいきませんが、未見の方は要注意)。*2

電力会社で働く主人公のロイは、大停電が発生したために、職場から電話で呼び出しを受けます。本編では、自宅から会社に指示された現場へ向かう途中で、UFOと遭遇する流れになっていました。この直後、会社からロイへクビを告げる電話がかかってくるのですが、本格的に事件へのめりこんで家族崩壊に到るのは、もうちょっとあとのシーン。仕事に手が付けられないほどおかしくなってるとか、クビになるほどの大きな失敗をしたとか、そういう描写は無かったので、ものすごく唐突な印象があったんですよ。
で、実は大幅に削除されたシーンがあり、整理すると、こんな流れ。

電話で呼び出しを受けて、ロイは会社へ向かう→到着すると、未曾有の大停電でオフィスは大混乱→さっそく現場に出動を命じられる→到着すると、電線が大量に消失し、変電所も火事になっている→どう復旧したものかと途方に暮れていると、停電しているはずの別の地域で「クリスマスツリーのような電飾が光っている」という報告を、車に搭載された警察無線で傍受する→それがもし本当なら、その地域で復旧工事をしている作業員が感電死するおそれがある→ロイは現場作業員から管理職に昇進したばかり、同僚からは「今、この現場を離れると、監督不行届でクビになっちまうぞ」と説得される→しかし、現場叩き上げのロイは仲間を見捨てることはできない→仲間たちへ警告するため、車に飛び乗り、現場を離れる→その途中でUFOと遭遇→後日、現場を勝手に離れたという理由でクビ。

なにゆえこんなにがんばって詳しく書かなきゃならなかったのか、よくわからないけど、まま、ようやく合点がいきました。つまり長々と書き連ねたほとんどの部分がカットで、最初と最後を強引につなげてあるんだから、そりゃ混乱するよ。こういう"混乱"を逆手にとるのが、たとえばデヴィッド・リンチのような人であり、映画の面白さのひとつではあります。

ブルー・レイ化の際に行ったリマスタリング作業で、いっそう画質が向上したそうです。ただ「2001年宇宙の旅」をデジタルリマスター版で見たとき、合成のアラまでハッキリ見えてしまって、かなりガッカリしました。音楽もそう。新譜のように新鮮に聞こえる作品もあれば、オリジナルの神秘性が消えることもある。闇の中で美しく輝いていた異性を、朝の光のなかで見てガッカリすること・・・これもまた「ブルー・レイ」現象と呼びたい。

*1:いわゆる「ディレクターズカット」「特別編」の悪しき風潮を産んだ元祖といわれてます。

*2:このボーナスディスク、購入してから7年も経つのに、今まで見てなかった可能性大。しばらく履いてなかったズボンのポケットからお金が出てきたような、得した気分。