今朝のロシア戦で、スペイン代表はふたつの違うチームになりました。前半、ピッチにいたのは黄色いセカンドユニフォームを着た、ふかしたカボチャたちでした。そこで魔法使いのアラゴネス爺さんがハーフタイムのロッカールームの中で、ムニャムニャと呪文を唱えた途端、カボチャたちはターボエンジン付きの馬車に大変身。あっという間に3点取ったとさ。めでたしめでたし。
ということで。ここ数日、メディアの主役は完全にロシア代表でした。シンデレラはアルシャービンであり、パブリュチェンコでした。アルシャービンには憧れのバルサから、パブリュチェンコにも世界中の強豪チームから数多くのガラスの靴が届きました。シンデレラたちの変身に驚いたロシア国民は、魔法使いフース・ヒディンクにあやかり、生まれた子供に「グース(※フースのロシア語読み)」と命名し、モスクワでは勝利を祝って、70万人もの市民が通りや広場に集結したといいます。ロシア全体がヒディンクによって、夢と魔法のマジック・キングダムと化したのです。
しかし、ロシアン・シンデレラたちにかけられていた魔法は、試合開始の鐘とともにすっかり解けてしまいました。彼らのかわりにピッチ上で舞ったシンデレラは、シャビ・エルナンデスであり、セスク・ファブレガスであり、アンドレス・イニエスタでした。
とはいえ、彼らのプレイが昨日かぎりの奇跡や魔法だったかというと決してそうではなく、普段、自分たちのチームで行っているレベルのプレイを、そのまま機能させただけなのです。大きな舞台で実力をうまく発揮できないのが、スペイン代表の最大の個性であり欠点だったのに、昨日の試合は美しく魅力的なサッカーをして、勝負でも勝った。後半の45分は夢のように時間が流れていきました。常識外れな選手交代も結果的にうまく事を運びましたし、交代出場した選手はことごとく点に絡みました。彼らに期待するすべての人たちが望んでやまなかったサッカーを遂にやってのけたのです。
このままガラスの靴が最後の90分間を保つのかどうか心配ですが、すばらしく華やかで、期待と希望がちょうど半々の組み合わせになった日曜の決勝戦が今から楽しみでなりません。フットボールの王子様が優勝カップを持ってシンデレラを迎えに来るまで、あと三日。