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午後からは薄曇りになったものの、外出日和であるのはまちがいなく、ひさびさに茅ヶ崎まで遠乗り。海沿いのサイクリングロードはたくさんのジョガー、ウォーキング中の老夫婦、バーベキュー中の若人グループ、デート中のカップル、大小さまざまなこどもと、大小さまざまな犬がトラップのように次々と飛び出してきて、気分はデスレース2000年。*1
無論、ほんとにハネでもしたらマズイことになるから、そこは慎重かつ大胆に走行。香港の路地を自転車で疾走するジャッキー・チェン(プロジェクトAだっけ?)よろしく、細かいハンドル裁き。さておき祝日ということもあって、海岸周辺は盛夏のような賑わい。海の上も縁日でよく見るスーパーボール釣りのように、プカプカギュウギュウとサーファーたちが波待ち。どう見ても、波に乗ってる時間より波間を漂っている時間のほうが長い。それもまたサーフィンの醍醐味かもしれないし、忍耐力と三半規管は鍛えられそうですけどね。あれで楽しいなら、ぼくにだってすぐできそうだな、って思っちゃう。
で、ぼくが茅ヶ崎へ出かけた目的のひとつは開高健記念館へ「一言半句の戦場」展を見に行くこと。サイクリングロードを右に折れ、松林を抜け、かつて開高さんが浜辺へ出た道を逆行する。
常設展は素通りで、企画展の部屋へ直行。10畳ほどの空間に、単行本未収録原稿集「一言半句の戦場」ゆかりの品々が陳列されている。自筆原稿、友人からの手紙、初出の掲載誌、写真、(ワインデキャンタ代わりに使って、友人達を驚かせた)クリスタルガラス製の尿瓶など、ファンにはたまらない遺品の中で、やはり目を惹くのがマネキンにかけられた洋服数点。
バーバリーのレインコート、トレードマークのツイードの帽子、そしてサントリーの社長からプレゼントされたという高価なスーツなど。遺品の中でも、特に衣服からはことさらの迫力を感じる。ガラス越しなので絶対にありえないんだけど、繊維に染みついた煙草の匂いやナフタリンの香り、開高さんの体臭さえ匂ってくるような気がして、急にドキドキしてきた。寝不足で情緒が不安定だったのかしらん?
離れにある書斎を覗いたあと、居間へと戻る。後から入ってきた何人かの見学者が椅子に座ってビデオを見ていた。
その後、茅ヶ崎の定番コースである古本屋数軒と中古レコ屋を巡回。ブックオフに行くと、ハードカバーの単行本が値札にかかわらず全品500円セールをやっていたので、海外小説を中心に抜きまくる。以前から欲しかった高橋源一郎訳の「ロンメル進軍―リチャード・ブローティガン詩集」もゲット。*2
ただ、あまり調子に乗って買いすぎると、ハードカバーだけに帰りの荷物が恐ろしいことになるので、泣く泣く何冊か棚に戻す。それでもコーマック・マッカーシーの「越境 (Hayakawa novels)」(新作「ザ・ロード」がバカ売れしてるって云うのに、早川はなにゆえ絶版状態を解消しないのか?)や、ジョン・アーヴィングの「サイダー・ハウス・ルール」上下巻を105円で。まずまずの収穫。
帰り道は、夕焼け目あてで散歩に出てきた人が増え、さらなるデスレース状態。おまけにトートバッグの紐が肩に食い込んで、痛い。休憩がてら自転車を止め、皆に倣って背後を振りかえれば、溶けた鉄のように赤い夕日が、ちょうど富士山ごしに沈むところ。毎日毎日、こうして太陽が沈んでいることが、ときどき信じられない。もしぼくがブラジル人なら、こんな気分の時にこそ「オーパ!」と叫べばいいのでしょうか?
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*1:もちろんロジャー・コーマン製作で、デヴィッド・キャラダインが主演したオリジナル版の方ね。男を跳ねたら30点、老人は100点・・・ってアレ。ダビングしたVHSテープが切れるほど繰り返し見たせいで、せっかくDVDが出たのに未だ買ってない。DVD化に際して「デスレース2000年」から「デスレース2000」に邦題が変更されたのは、語感的に不満。こんなの買うのはマニアだけなんだから、そんな無粋なことをしなくてもいいのに。
*2:この本、肝心の高橋訳は「・・・」(個人の感想です)だが、原文が併記されているので全然OK。