友人であるHuman Recordの門脇君がmixi内の日記で、ジスモンチに関するぼくのエントリーにレスポンスし、最近ファースト・アルバムをリリースしたMetronomyとジスモンチの相似性を指摘してくれたんだけど、Metronomyに通じるのはレイト・セヴンティーズのアマゾン川周辺というよりも、レイト・セヴンティーズからアーリー・エイティーズのサンフランシスコ湾周辺の音楽が妥当じゃないかなあ、という気が個人的にはしています。


Metronomy / Heartbreaker


Metronomy / Radio Ladio

タイトルはコステロの「Radio Radio」の引用なのかな。"Ladio"は英和辞典にも載ってない造語みたいなので、ただの語呂合わせというか、言葉遊び的なものでしょう。で、門脇君はMetronomyを「ドリーミー」というキーワードのもとに紹介してるのですが、たしかに「メトロノミーはドリーミー」の方が、キャッチコピーとしての完成度は高いですネ。
でも、ぼくの舌にはドリーミーさよりも、ニューウェイヴ的なユガミー(歪み)の方が味わいとして強く感じる。ただこれはハッピーターンが甘いか塩辛いかを論じるようなものなんで、趣味嗜好のレベル。Metronomyの音に引っかかった人たちへぼくが紹介したいのは、やっぱりサンフランシスコ周辺音楽・・・・・特にサブタレニアンとかラルフ・レコーズ周辺のミュージシャンだな。いくつか挙げてみましょう。

以下、このエントリーはラジオを聴いてるつもりで、ぜひ読んでみてください。それでは始まります、ミズモトアキラのマンデイ・ソング・ブック。今回はレギュラー・プログラム「YouTubeからひとつかみ」でお届けします。

Tuxedomoon / Jinx

Tuxedomoonはザ・レジデンツが設立したレーベル、ラルフ(Ralph Records)からデビューしたグループ。サンフランシスコ市立大学で電子音楽を専攻する学生ふたりが1977年に結成。バイオリンとか入ってるし、昔はこのお耽美っぽい雰囲気が好きじゃなかったんですけど、今はそれほど抵抗感を感じません。ファーストアルバムをリリース後、早々とヨーロッパに拠点を移し、現在も活動継続中。


Snakefinger / The Man in the Dark Sedan


Snakefinger / You Don't Blame Me, Do You?

ザ・レジデンツのギタリストとしても有名だったSnakefinger。本名はフィリップ・チャールズ・リスマン。渾名の由来は指板の上を妖しい蛇のように動くギターテクニックから。もちろん電気グルーヴ「スネークフィンガー」は、彼のニックネームからの引用ですし、ぼくが以前働いていたレコード店マニュアル・オブ・エラーズ」も、彼が1982年に出したアルバム「Manual of Errors」からの引用。
ジャズっぽく弾いても、ブルーズを弾いても、カッティングしても、どんな演奏もすべて彼らしいというか、スネークフィンガーのスタイルになっちゃうところが天才の為せる技。しかし彼もまた、あまたの天才たちと同様に死神から早々と目を付けられ、上にリンクした1987年のトロントライブの直後、ツアー先のオーストラリアにて急逝。あらためて合掌。
ラルフ・レコーズは他にもフレッド・フリスとかユージン・チャドボーン、アート・ベアー、立花ハジメさんのファーストアルバム「H」の米国盤をリリースしたりもしているので、ニューウェイヴ好きなら一度は通る道。

で、そのラルフよりさらにマイナーな「サブタレニアン」については、Wayback Machine内に奇跡的に残ってた10年前の"dateoweb"でも紹介したことがあるんですけど(我が文章ながらまだまだ青々しいというか、二十代してて良いですね)、1979年からスタートしたこのレーベルは、西海岸のパンク〜ニューウェイヴシーンでそれなりの存在感を発揮しながら二十一世紀まで延命。少なくとも公式ページの最終更新日(2002年6月25日)までは存在したことが確認できます。*1


Club Foot Orchestra / Theme From Club Foot

当時のラルフとサブタレニアンは兄と弟のような関係性で、CLUB FOOT ORCHESTRAはサブタレニアンのコンピレーション「CLUB FOOT」(1981)へ参加した後、やんちゃな弟的存在であるサブタレニアンが、徐々にパンク色を強めていくなか、知的で変態度の高い兄=ラルフから正式なアルバムをリリースします。*2
この「Theme From Club Foot」こそ「CLUB FOOT」に収録された曲なんですが、これを立花ハジメさんが「H」というタイトルに改題&カヴァーしました。そしてその「H」はのちに、ラルフがアメリカでリリースしたという因縁も。



存外、長くなってしまいましたね。いやはや、疲れました。そろそろ終わりにしますが、最後にひと言。
新しい音楽に触れて、それをひとつのリファレンスとして、過去の音楽を再発見するというのは、音楽を聴く大きな楽しみのひとつです。自分の中で他の音楽(他の芸術、人、世界、過去、未来・・・エトセトラ)との繋がりを見つけ出せなくても、他人が勧めるものの中にだって、また新しい出会いがあるはずです。レコードがCDに、CDからハードディスクへメディアは移行しても音楽はなお"回って"います。こうしたメビウスの輪のような循環に飛び込んでくれる人がすこしでも増えれば、音楽の世界はふたたび活気を取り戻すはずなのです。
月末から月のアタマには、ぼくのような自営業者は暗い気分になりがち。せいぜい良い音楽でも聴きまくって、憂さ晴らしをしたいと思います。
それではみなさん、またの機会にセイムタイム・セイムアドレスでお会いしましょう。ごきげんよう、さようなら。


Nights Out

Nights Out

*1:公式ページに記載されている住所Google Street Viewで見てみたんだけど・・・さすがにもう無いかな。

*2:公式なバイオには1983年結成とあるのですが、誤差に関する詳細は不明。