英雄と悪漢、ポリスとコソ泥、ヒデとロザンナなどなど、音楽の世界には様々な「ナニナニとナニナニ」が、時に曲のシームとして、時に制作上のパートナーとして登場しますが、今回ぼくが気になったのは「新人とベテラン」という組み合わせ。その多くは若者と老人というコンビです。こういう組み合わせって、よく刑事ドラマの定番として見かけますよね。ダーティー・ハリー、リーサル・ウェポン、セブン・・・エトセトラ。これらすべての原型になったのが黒澤明野良犬 [DVD]」の志村喬+三船らしいんですけど、ほんとだろうか。
まあ、余談はさておき。The Bird and The Beeのヴォーカリストとしても活動中のイナラ・ジョージ嬢・・・・・彼女は故・ロウエル・ジョージ(リトル・フィート)の一粒種でありますが、この八月に出た二作目のソロアルバムを彼女と共同制作したのが、誰あろうヴァン・ダイク・パークス翁であります。リリースから若干間が空いたのですが、先日ようやく聴くことができました。感想? そんなのイイに決まってるじゃないですか!
Inara George - myspace
http://www.myspace.com/inarageorge

若い女子(74年生まれなので年齢的には決して"若く"ないですが)のエキスに発憤(発情)したVDPは、三十路の頃に回春したかのような、眩しくて瑞々しい往年のオーケストレイションをこれでもかと披露してるんです。「with〜」とクレジットされてるだけあって、2年前に出たジョアンナ・ニューサムとの作品と比較しても、格段に手加減なし。一瞬セルフ・パロディにも聞こえるくらい、これぞVDP的なアレンジメントで彼女の唄を支えます。
思えばイナダの亡き父ロウエルとVDPは年齢やデビューの時期も近く、良き友人でした。娘の彼女にとっても、叔父のような存在であるVDPとは心からリラックスできる間柄だったはず。実はこのプロジェクトのことをぼくが知ったのは、アルバムよりも、ここで無料配信されているスタジオライヴの方が先。聴くなり見るなりしていただければ一目瞭然ですが、彼と彼女のひとかたならぬ親密さを伝えてくれるはずです。
このライヴでは、イナラがヴォーカルとアコースティック・ギターを、サポートにドラムとウッド・ベース、そしてVDPがおなじみの前掛け姿でピアノを弾いています。楽曲はもちろんアルバムからのものですが、アレンジはシンプルで、曲によっては同一の作品と思えないくらいです。アルバムは対等か、それ以上にVDPが主張した作品だったし、こんなシンプルな編成のライヴじゃ再現不可能なレヴェルにまで達してしまってるわけで、こうなるのはむべなるかな。先にこの動画でアルバムの仕上がりを想像していたせいもあって、その違いが、より大きな驚きへと変わったわけです。もしもロウエルが存命で、父娘共演が実現したとしても、はたしてこんなクオリティの作品が残せたかどうかとも思ったし、音楽に限らず、父親にはなんとなく照れくさくて話せないようなことも、気心の知れた父の友達になら気軽に話せるようなことだってあるでしょう。そういう絶妙な距離感がもたらしてくれた作品になっているような気もします。
しかし、今年リリースされたブライアン・ウィルソンの「That Lucky Old Sun」でもVDPはコラボレーターとして素晴らしい仕事っぷりを披露してたし、65才にしてこの溢れんばかりの"老人力"にはひれ伏すしかありません。VDPって音楽家として成功する前もハリウッドで子役として活躍してたから、芸歴はいったい何年くらいになるのでしょうかねえ。


Invitation

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ラッキー・オールド・サン(DVD付)

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で、新人とベテランという風に括るのは若干無理がありますが、芸歴の差という意味では「新人とベテラン」と断じても過言じゃ無い、別のコラボ作品がリリースされました。かつてP-FUNKのメンバーとしても活動していたキーボーディストのアンプ・フィドラーが単身ジャマイカに渡って、スライ&ロビーとがっぷり四つで制作した「Inspiration Information Vol.1」ってアルバムがそれ。


Inspiration Information 1

Inspiration Information 1


CDはまだ手に入れてないんだけど、ティーザーとして公開されている動画を見るだけでワクワクしてきます。



教える・教わるというのは、必ずしも高いところから低いところへ水が流れるような関係性じゃなくて、特にそれが優れた芸術家同士なら、ルーキーの吸収力がベテランにも必ず良いフィードバックを与えるような気がします。というか、いくつになってもそうした吸収力を衰えさせない才能こそ、良きベテランと良きルーキーの資質なのかもしれませんね。