誰の心のなかにも家族や恋人や大事な友だちのための占有スペースがあるように、一週間ほど経った現在も、道東の風景や出会った人たちのことがしっかりと焼きついて、居座って、こびりついて、離れてくれそうにありません。
三月末とはいえ、冬将軍の大立ち回りであいにくの雪模様。町は昼間でもひと気が無く、歩行者より見かけた牛のほうが頭数として多かったくらいなのに、豊かで、刺激的で、同時にほっとするような、いままでに訪れたどんな町ともちがう、強烈なインパクトを受けた道東の旅。これらの写真とレポートで、その何分の一かでも共有してもらえると嬉しいのですが。
<写真:中標津空港で旅人を待ち受ける、ジェフ・クーンズの作品のような、等寸大のプラスティック製乳牛>


13時半、定刻よりも三十分ほど遅れて根室中標津空港に到着。迎えに来てくれたのは今回のイヴェントを取り仕切ってくれた別海町のCDショップ「ぴっくあっぷ」オーナーの奥山一浩君。彼とその仲間たち「HOLLYWOOD」は過去に須永辰緒さん、池田正典君、キャプテン・ファンクこと大江君、新井仁さん、沖野修也さん、MUROさん、など多数のゲストを道東の地に招いてきたオーガナイザーであり、奥山君とは同い年というよしみ。
挨拶もそこそこに最初の目的地「養老牛」へ向かいました。空港から10分走れば、もうこんな風景。クルマを止めてもらって、エンジンを切ると完璧な無音。防音されたスタジオの無音ともまったく違う、今までに経験したことの無い、怖いくらいの静けさ。もちろん携帯の電波も届きません。





説明不足でしたが、養老牛(ようろううし)・・・というのは地名です。有名な温泉旅館「湯宿だいいち」は日帰り入浴が600円で可能。ただし入湯できるのが13時から15時と短いため、空港から直行することになったのです。北見から駆けつけてくれたサポートDJの清野君、その奥さんのノゾミちゃんと合流し、さっそく入浴。初対面〜即ハダカのつきあいっていうのは地方イヴェントならでは。たとえ十年来の友だちでも、いっしょに風呂なんて入ったことがない人たちはザラにいるのにね。
ここのお湯はとても滑らかで、熱くて、しょっぱい(含石膏食塩泉)。露天風呂は混浴(!)で真横には自然の渓流が流れてます。川の水面と同じ高さに作られたお風呂もあり、おまけにこの日は雪・・・つまり完璧な頭寒足熱の状態。短い時間ほどしかいられなかったけど、到着からわずか一時間で最初のピークが来た感じ。




ちょっと遅めの昼食をとりに、四人で回転寿司「根室花まる」へ。回るお寿司とはいえ、無論、地元のネタをふんだんに使ってるので、ほかの土地じゃお目にかからないサカナちゃんたちにたくさん出会えました。生ニシン、油かれい、生えんがわ、釧路産のぶどうえび、ツブ貝・・・サーモンやホタテのような定番物もさすがは本場、まったく味が違います。思い出しただけで・・・嗚呼。どうしてひとは"食いだめ"ができないのでしょうか。とはいえ午後八時から本格的な夕飯が待っていたし、おのおののペースで食べる量をセーブできるという意味で、回転寿司をチョイスしていたにもかかわらず、すっかり食べ過ぎて、あとで泣きを見ることに。*1




この後、いったんイヴェント会場である中標津の「SAFEWAY」に寄って、サウンドチェック。そして今日の宿泊地である別海町へ。
奥山君のお店「ぴっくあっぷ」を表敬訪問&お店番をしていた彼の奥さんをまじえて記念撮影。演歌のカセットや安室ちゃんの新譜に並んで、quasimodeが大々的にプッシュされてたり、ぼくのCDがUTADAの新譜やあゆのニューシングル(実写版ドラゴンボールの主題歌)より売れてるんだから、これはもう「もしもボックス」並のパラレルワールドですよ。それにしても、道東DJ陣の嫁の美人度はただごとじゃない!
ちなみに根室出身の奥山夫人から銘菓「オランダせんべい」をおみやげにいただきました。せんべいを名乗ってるのに、ふにゃっとした柔らかい食感のお菓子。和風のワッフル(和風ッル)って感じ。



ホテル(MAG.HOUSE*2)で小休止の後、空腹感ゼロのおなかをさすりつつ、ホテル近くの居酒屋さんへ。個室のふすまをガラッと開けると、テーブルの上に真っ赤っかの巨大生物・・・これはまさしく花咲ガニ!!!!!!!!!! その横には北海しまえび!!!!!!!!!!
そして現役漁師でもあるDJの山本君が当日朝に自ら採ってきた山盛りのホッキ貝を刺身で持ち込み! 別海、最高だ! 魔女菅原になったつもりで赤ちゃんの腕ほどの巨大な爪肉を喰らう!*3









強烈な吹雪のまっただなか、閑散とした市街をとおり抜けて、午後11時すぎにSAFEWAY着。ドアを開けたら、店内はまったくの別世界。その辺、写真を見てもらえば、もう説明は要らないよね。12時過ぎから予定をオーヴァーして約2時間半。ひさしぶりにマイクを握って熱唱したり、煽ったりしたせいか、一週間経った今でもまだノドが痛い!




撮影した山本君の腕が良いのもあるけれど、こうやってあらためて写真を見返すととにかくみんなの表情が最高で、胸が震えます。DJの最中はフロアが揺れてトランポリン状態、DJブースは傾くし、プロジェクターのスクリーンは落ちるし、ダーツの機械は倒れそうになるしで、一歩まちがえば「惨事、惨事、大惨事(四街道ネイチャー)」。それでも大部分のお客さんやスタッフたちにとれば勝手知ったるハコなわけで、たぶん限界点ギリギリのところで抑制されてるにせよ、コーフンしつつも、けっこうハラハラしました。
会場に持ち込んだ各種CDは完売御礼。お買い上げの皆さんにはもれなくサインもさせていただきました。「意外とセンスいいですね」「しらふのわたしをこんなに踊らせるなんて流石ですね」などのご感想をいただき、まことにありがとうございます。最後に競演したDJのみんなや常連さんたちと記念撮影。



吹雪&凍結した路面を物ともせず、奥山君のスムースな運転で別海町に戻ってきたのは、朝四時をまわったころ。コンビニで仕入れた夜食の北海道限定「ファイターズヌードル」をテレビ見ながらすすり、シャワーを浴び、ベッドにもぐりこもうとしたら、なんだかほの明るい。窓の外に見えたのはこんな風景。



午前11時にチェックアウト。奥山君、清野夫妻、山本君といっしょに中標津の食堂で早めの昼ごはん。ぼくはカツ丼。みんなもイヴェント明けなのに揚げ物を中心としたガッツリメニュー。道東の人たちは胃袋が強い。そして空港近くの「ラ・レトリなかしべつ」でジェラート。ぼくは抹茶フレイヴァーをシングルで。*4



午後一時過ぎに中標津空港到着。一泊二日ながら滞在したのはあっというまの24時間。お世話になったみんなにこんな笑顔で送られて、機上の人。アイル・ビー・バック・アゲイン!


Photo : A.M. & Keiichi Yamamoto (HOLLYWOOD)

*1:その半分くらいの責任は、男子以上の胃袋を持つ清野君の奥さんがわれわれのチンケな配慮などしゃらくさいとばかりに、いっさいの妥協なく、旨いものをかたっぱしから注文してくれたおかげでもあったのですが・・・。

*2:ここの一階にはDJバーがあって、今回のパーティをサポートしてくれたHOLLYWOODの面々はレギュラーイヴェントを開催中。

*3:どうしても食べきれなかった分は、ペース度外視の注文でわれわれを苦しめた清野妻が急遽実家から呼び出され、彼女がすべて平らげました。鉄の胃!

*4:男性陣が皆シングルをチョイスする中、ここでもひとりだけダブルで食べてるひとがいましたけど、もう誰とは書きません。ぼくが食い負けるなんて・・・。