話題としては数日遅れてしまいますが、今シーズン三冠を目指している我らがFCバルセロナ、まずは一冠目の国王杯を獲得しました。放映権を持ってるWOWOWが放送しなかったので、ネット中継にて観戦。
結果的には1対4と、まさにバルサの圧勝。しかし、2対6で勝った先日のクラシコ、奇跡のロスタイム弾で勝ち抜けしたCLのチェルシー戦と比較しても、ぼくの中では今年の、いやここ数年の中でも一、二を争うベストゲームでした。
二ヶ月以上前にカードが確定して以来、この一戦のためにテンションもフィジカルも高めてきたビルバオと、激戦に次ぐ激戦で満身創痍のバルサがせーので一発勝負に臨んだとき、ビルバオが断然に有利なはず。実際、試合開始直後はビルバオの激しいプレスでバルサはいつものようにボールを支配できず、しばしば中盤でボールをロスト〜鋭いカウンター攻撃を仕掛けられました。そして前半9分にセットプレイ(またしても!)で先制される苦しい展開。土壇場で引き分けに持ち込まれた先週末のビジャレアル戦の展開がよぎります。
しかし「またしても」に動揺しないのが最近のバルサの強み。CBに緊急起用されていたヤヤトゥレの、味方も驚くスーペルゴラッソ(スーパーゴール)で追いつくと、徐々にバルサがポゼッションを回復。ビルバオの息切れが目立つようになり、気がつくと4得点・・・しかもそのすべてが一点目に劣らぬ美しいゴールでした。*1
それよりもなによりも。この日のスタジアムに詰めかけた2チームのファンは素晴らしかった!
ビルバオバスクバルセロナカタルーニャという、共に強烈な地域主義を持った人々がサポートしているチーム。特にビルバオは過去90年間、バスク人以外の選手を受け入れないという「純血」を貫いています。国王杯というくらいですから、会場のメスタージャ(バレンシア)にはもちろんスペイン国王夫妻も観戦に来ているのですが、国家斉唱にも両チームのファンが一丸となって口笛を鳴らし、これみよがしに州旗を振りかざす・・・チーム同士は敵だけど、反国家という意味では強烈な一体感がファン同士にあって、スタジアムの雰囲気を独特なものにしていました。
完膚無きまでに叩きつぶされたビルバオの選手たちが悲嘆の涙に暮れるなか(比喩ではなく、ほんとうに)、試合後もビルバオファンたちはスタジアムを立ち去ることなく、両チーム、それも勝者のバルサを熱烈に讃えている姿は感動的で、ぼくもそこそこいろんな試合を観戦してきましたけど、こんな状況はいまだかつて一度も見たことがありません。
この試合、ビルバオの選手たちがなりふりかまわぬハードタックルを仕掛けることで、バルサの選手たちを潰しにいくことだって可能でした。バルサのプレイヤー・・・特にレギュラー組のメッシやシャビ、エトォあたりはチャンピオンズリーグ決勝が迫っている今、このタイミングで怪我することがいちばん怖いことなので。後先考えずに、最後の手段としてビルバオがそういう展開に持ち込む可能性は高かったはずです。試合前の現地メディアもそんな論調でこの試合を煽っていました。
しかし実際は、最後までフットボールバルサに対抗しようとしていたし、ファンもそれを力強く後押し。ゲームを最後まで投げることなく、ロスタイムに至っても、熱きバスクの戦士たちは一点返すことに集中してました。フットボールは「戦争」ですが、あくまでそれはエンターテインメントしての「戦争」。両チームの、特にビルバオのファンたちからは世界有数のフットボール・インテリジェンスを感じた次第です。なにせビルバオの創立は1898年(明治31年)だからね。1899年創立のバルサより一年先輩、世界最古の部類に入るフットボールクラブ。さすがです。*2
何度か書いたことがあると思いますが、DJしていても、その日のパーティがどれくらいの盛り上がりになるかは、お客さんが八割くらいのカギを握っているという実感を持っています。もちろんそのための受け皿を万端用意する努力や誠意が、主催者や演者である自分の側にあってのことなのですが。そんな実感があるからこそ、そのすべてがお皿の上に美しく盛りつけられたこの試合のことを、たぶんぼくは一人のフットボールファンとして一生語り続けると思います。*3
そして今日の夜、レアル・マドリーが負けるか引き分けるかで、バルサのリーガ優勝も決まります。もしマドリーがビジャレアルに勝っても(可能性は低いと思いますが)、明日バルサが勝ち点をひとつ積み上げるだけでOK。そうすればあとは今月27日のマンチェスター・ユナイテッドとの大一番を待つばかり!
このブログでどれくらいの人がぼくのフットボール話についてきてくれてるかわかんないけど、少なくともあと二週間ほどは、アタマの半分がローマに飛んじゃってますから、許してくださいね。


ちょうど「漂流教室」のこの人みたいな感じ。


バスクとバスク人 (平凡社新書)

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*1:コンディションを十分に整えてるはずのチームが、連戦で疲労の溜まった選手に走り負けし、足が止まるところはよく見ます。こないだのクラシコも必勝態勢のマドリーを軽くいなしての大勝利。なぜこうなるかにはいろんな要因があると思うのですが、バルサの選手はこういう展開へ持ち込むのがチョー得意。ボールを巧みに操ることだけがフットボーラーの技術じゃないんですよね。

*2:この辺は試合を見に来てるのか、歌を合唱しにきてるだけなのかわからないJリーグの"サポーター"にもぜひ高めていただきたい部分。

*3:J SPORTSで明日から試合の録画放送があります。放送予定は<バルサTV 08/09コパ・デル・レイ 決勝>バルセロナ vs. アスレティック・ビルバオhttp://www.jsports.co.jp/program/info/28061.html)で。