今日の天気とまさにピッタリな『秋日和』をBS2で。小津のカラー作品で唯一未見だった一本。戦後の小津作品を彩った並み居るスターたちがこれでもかと登場するキャストの豪華さといったら! 一流のソロイストだけを集めたビッグバンドかフルオーケストラか(杉浦春子がいないのは残念です)。
なにしろ、こんな笑える小津の映画は無いんじゃないかってくらいダイアローグもプロットも愉快なんだな。赤と緑を軸にした画面の色彩設計は、五十年前の日本なのにどこかSF的でもあり未来的でもあり。それでいて、銀座周辺が舞台なのに路地裏とか喫茶店とかカウンターだけのバーとか、とにかく狭っくるしいとこしか映さないのは相変わらずだけど。
中でも特に気に入ったシーン・・・いや正確には"気になったシーン"は、ヒロインの司葉子とその親友役の岡田茉莉子(影の主役)が、友達数人と一緒にピクニックする場面。小津にしてはめずらしく人物をかなりの引き画で撮ってるんだけど(画像参照)、山道を歩いているみんなの足が右左右左とピッタリ揃ってる(笑)。最初は偶然かと思ったんだけど、カット代わりしても完全に揃ってたんで、これはやっぱり演出だと確信。たしかに足並みが揃ってないと、画面から視覚的に伝わるリズムがバラバラになっちゃうのはわかるけど、そこまでやるか! と。
周囲をかき回すだけかき回すトラブルメーカー、三馬鹿(佐分利信中村伸郎、北竜二)の掛け合いは絶妙だし、女性陣の衣装は洋服も着物もことごとくチャーミングだし、ラストシーンはやっぱりグッと来ちゃうし。
今まで「小津の映画でまず一本見るなら?」って訊かれたとき、どの作品を推薦したらいいか、わりと真剣に悩んでたんだけど、今ならこの『秋日和』は自信を持ってリコメンドできるな。オリジナルのネガが消失したせいで画質も音質も致命的な『東京物語』は映画史的な評価はともあれ、見るのは後回しでいいと思うし、むしろ『東京物語』見て、いまいちハマんなかったなあなんて人にこそオススメかも。