放送時間が来るのを毎日楽しみにしている番組が、月曜からBS1の"BS世界のドキュメンタリー"枠でオンエア中の『SOUL DEEP』。
アメリカ黒人ポピュラー音楽の歴史、というサブタイトルが内容を完結に説明しているけれど、BBCが2005年に制作したドキュメンタリー・シリーズで、初回はルイ・ジョーダン、ルース・ブラウン、レイ・チャールズらをフィーチャーした「ソウル・ミュージックの誕生(原題:The Birth Of Soul)」。昨日放送された二回目が「ゴスペルからソウルへ(Gospel Highway)」・・・・・・これはサム・クックを中心に、ステイプルズ・シンガースらゴスペル出身のシンガーたちを紹介。
特に昨日の「ゴスペルからソウルへ」には、ぼくにとって未知だった事実が次々に語られ、かなりの見応えでした。
たとえば、ゴスペル音楽の世界から誕生した"カルテット*1"と呼ばれるコーラスグループのこと。抑圧されたアメリカの黒人社会のなかで、最強の音楽エンターテインメントとして受け入れられていた"カルテット"のグループは"ゴスペル・ハイウェイ"と呼ばれるルートを使って、全米の各地へ巡業し、熱狂的な人気を集めていたこと。そしてそのカルテットの代表的グループ、ザ・ソウル・スターラーズのリード・シンガーだったサム・クックが、ゴスペルに"背信"する形でポップ・ミュージックへ転向し、大衆的な人気を勝ち得る一方で、ゴスペルに対して厳格な考えを持っていた人々からは、裏切り者として拒絶されていたこと。スポーツの世界で、英雄と悪漢の両面を併せ持つスーパースターだったモハメド・アリと義兄弟のような関係を築いていたこと。黒人歌手が自作曲の著作権をコントロールすることが難しかった時代に、自ら音楽出版ビジネスを立ち上げ、アーティストとしての独立性を保とうと努力していたこと・・・・・・などなど。
ぼくにとっては、いわゆるクラブ・ミュージック的ではないソウル・ミュージックの代表的アーティストで、滑らかな歌声を持ち、一時代を築きながら夭逝したスター歌手、といった平板なイメージだったサム・クックの為人(ひととなり)に血が通い、立体化したような気がしたし、今もってミステリアスな死も含めて、大きな余韻となって心に張り付くことになりました。*2
毎回冒頭にはピーター・バラカン氏が登場して、見どころを解説。今日はモータウン特集で以降、サザン・ソウル、ファンク、ヒップホップ時代のソウル・・・・・・と土曜までの全六回続きます。

PS:1月2日に放送されて、なんとなく見逃していた同じく"BS世界のドキュメンタリー"ビートルズ特集の一本で、クラウス・フォアマンを取り上げたドキュメンタリー「サイドマン〜ビートルズに愛された男〜(原題: All You Need is Klaus)」も今週土曜に一挙放送されるので、今度こそ観なきゃ。

*1:カルテットは通常四人組という意味でジャズ・バンドの編成などを指すことが多いけれど、チャンバラ・トリオが三人組でなく、はたまたピチカート・ファイヴが五人組でなかったのと同様に、二人のリード・シンガーと複数のコーラスというメンバー編成が基本だったようだ。番組の中で紹介されていた映像によると、リード・シンガーが掛け合いで歌う合間に、バックのメンバーはハンド・クラップや合いの手のコーラスを入れて、観客を煽っていた。

*2:それがどんなタイプの余韻だったかを詳しく説明はできないんですけど、このサムの人生をぜひクリント・イーストウッドに映画化して欲しいと思った・・・・・・なんて説明したら、共有してくれる人がいるでしょうか。