火曜日。仕事で都内へ出向いたついでに、モリタタダシ、奥田健介NONA REEVES)、オオクボコウイチの各氏と落ち合い、三鷹のラーメン屋「江ぐち」へ行ってきました。
ごぞんじの方もいらっしゃると思いますが、この「江ぐち」は半世紀以上の歴史を持つ老舗のラーメン店であり、かつて中央線沿線・・・特に吉祥寺周辺で十年以上暮らしていた頃は、何度となく通った店。たくさんの漫画家や物書きが住む土地柄なので、数々のエッセイやマンガに取り上げられたことでも有名ですし(ただし取り上げられ方はいわゆるグルメ的なそれではない。あとで詳しく書く)、三鷹の名物と呼べる数少ない飲食店でした。

そんな「江ぐち」が一月いっぱいで閉店してしまうというニュースを目にしたのはトゥイターでした。その報せは瞬く間にリトゥイートされ、その日からTL上に「江ぐち」の文字を見ない日は無かったほど。

閉店に至ったいきさつについては、かつて『小説 中華そば「江ぐち」 』を書いた久住昌之さんのブログを一読していただくことにして、われわれ四人が夕方五時に到着した際も店内は満席。外に五、六人の行列ができてました。
15分ほど待ったところで、最初に空いた席へモリヤン。次に空いた二席にぼくとオッケン、そしてモリヤンの横に空いた席へオオクボちゃんと若干の時差で入店。
思ってたより全然リラックスした店内。湿っぽいムードも皆無。急かされるような雰囲気でもなかったので、まずオッケンと二人で中ビンと「焼豚」を注文。別皿の「焼豚」はチャーシューと竹の子(メンマ)に刻みネギ・・・つまりラーメンのトッピング一式が皿に盛られ、醤油ダレ(ラーメンスープで薄める前の原液)がかけられたツマミ。これがじつに美味い。
そういえば「江ぐち」でビールを飲むのは初めてだったかも。ぼくがこの店に来る時は、たいてい目と鼻の先にある中古レコード屋「パレード」のついでだったから。パレード帰りなら財布の中が乏しくなってるし、行きに寄った場合はレコ掘りに備えて、とてもビールを飲むような気分じゃない。第一、昔も今もぼくはひとりで呑む酒が好きではないのです。
タイミングを見計らって、ぼくはチャーシューメンを注文。オッケンはワンタンメン、モリヤンとオオクボちゃんはもやし入りのワンタンメン。
久住さんも書いてるとおり、この店のラーメンを美味いかと聞かれると必ずしもそうとは答えられない(笑)。かといってマズイわけじゃない。あっさり系の醤油スープにボソボソっとした日本蕎麦のような色と食感のストレート麺。環八あたりでしのぎを削るラーメン店じゃ考えられないくらいのシンプルさ。でもたまらなく個性的。マーケティングで弾きだされたような"美味"とは正反対の味。人間で云えばファニー・フェイス(若しくはブサカワイイ)。
三鷹の周辺がビックリするくらい開発されて、どこかのちょっとした地方都市みたいに整備されても(降りる駅を間違えたかと思った)、駅前から歩いて五分の雑居ビルの地下にはいつまでも「江ぐち」があって、みんな永遠に無くならないって信じてたと思う。もちろんどんな店だっていつかは無くなるんだけど、そのタイミングをとっくの昔に逸してるような<死に忘れた>ような暢気さが「江ぐち」にはあった・・・という方が正確かな。
あと二日でお店は無くなってしまうけれど、いつもと同じでいつもと違うあの「江ぐち」がまだ営業している。まだ今は営業していると思うだけで、あのラーメンの味がジワーッと口いっぱいに広がって、センチメンタルな気分になってしまう。
もしも月末までに時間があって、三鷹へ行く余裕があれば、行列覚悟でぜひ食べに行ってみてください。あんなラーメン屋にはもう二度と出会えないし、初めて食べた人でもあのセンチメントをかならず共有してもらえるはずなので。