スメル・ライク・ア・ファミマ・スピリット

ごきげんいかがでしょうか?
豊橋の話も(日本対オランダ戦の日でした)鹿児島の話も(豪雨で大変でした)報告せず、いや、実際には随時つぶやいているのですが、さておき久々にブログを書いてみたいと思います。

いや、改まるほどたいした話じゃないんです。ほんとにたいしたことないんですけどね。でもハナシはじめちゃったんで、最後まで読んでくださいね。

風も少しひんやりとし始めた夕暮れ時に、最寄のいちばん大きな駅まで電車で行ったんです。日用品の買出しに、ちょっと大きめのスーパーまで行く必要があって。電車に乗ってる時間は五分ほどでしょうか。
冷房の効いた車内に乗り込んですぐに、なんとも不思議な匂いが漂っていることに気づきました。
いや、不思議と言っても、今までに掻いだことが無いヘンな匂いだとか、異臭だとかそういうことではなくて、それは電車の中じゃまず嗅ぐ可能性がないタイプの匂いだったので、咄嗟に「不思議な匂いがする」と感じてしまったのです。

その匂いはドアの横に立っている青年のところから漂ってきていることがわかりました。

年の頃は三十前後。さっぱりした短髪、ノンブランドの灰色のポロシャツにチノパン、スポルディングの白いテニスシューズを履いた青年は、ファミリーマートの袋ひとつを右手にぶら下げているほか、なにひとつ荷物は持っていません。ぼんやりと社内吊りの「MAQUIA」の広告を眺めています。

彼の唯一の荷物であるファミマの袋は、茶色でした。

…もうお分かりですね? 青年がただひとつ持っていたその荷物は、お弁当を入れてくれる茶色の袋だったんです。つまり、その不思議な匂いとは、電子レンジで温めたばかりと思われるホカホカしたお弁当の匂いだったのです。
温めたばかりのお弁当ひとつ持って、小田急線に乗りこむ青年。彼はいったいどういう了見なのでしょうか?
彼の向かう先にはコンビニが無いのでしょうか。コンビニの無いような場所へ弁当ひとつぶら下げて行く用事はなんなんでしょうか。電車は上りです。まがりなりとも終点は新宿です。そもそも小田急線の沿線にコンビニが駅前に存在しないようなところがあるんでしょうか。いや、百歩譲って弁当の存在は容認するとしても、それをわざわざ温めてもらってから電車に乗る必要はあったのでしょうか? まさか車内で食べるつもりだったのでしょうか?

できるだけ合点の行く推論を出そうと頭をフル回転させたのですが、思考は納得のいく場所へ導いてくれぬまま、藤沢駅に着いてしまいました。
電車を降りてふりかえると、彼はまだドアの側に佇み、頭上の「みのり会」の広告を見つめていました。
彼はどこまで行くのだろう? 弁当が冷めたらどうするのだろう…?

無数のクエスチョンマークに追い立てられながら、ぼくは改札を抜け、駅を後にしました。