RNBラジオ Smix ハッピー・バースデイ、ビル・エヴァンス特集
毎年8月は父親と妹の誕生日が続けてあるせいか、つい誰かの誕生日を祝いたくなってしまいます。
そこで今回は8月16日が誕生日だった、ビル・エヴァンスの小特集をお届けしました。
簡単に彼の人生を振り返りましょう。
1929年8月16日、ニュージャージーの裕福な家庭で生まれたビルは、音楽好きだった父の勧めで、幼少の頃からクラシックを学び、その後、音楽大学に進みます。その一方、兄からの影響でジャズに魅了され15歳の時からプロとしてピアノを弾いてました。
大学を卒業し、いよいよ音楽家の道に本腰を入れようとした矢先に徴兵され、陸軍に入隊します。ちょうどその頃、アメリカは朝鮮戦争を戦っていました。ビルが前線に送られるようなことはなかったけれど、ミュージシャンとしてのキャリアの出鼻をくじかれた形になったのと同時に、軍隊生活の中で麻薬の常用が始まってしまいます。
1954年に除隊し、翌年、ニューヨークのジャズシーンに飛び込んだ彼は、27歳のとき、はじめてのリーダーアルバム『New Jazz Conceptions』(1957年)をリバーサイドというレーベルから出します。
代表曲となった「ワルツ・フォー・デビィ」もすでに収録されていますが、それはちょっと後回しにして、エヴァンスのキャラクターや才気が最も感じられるとぼくが思う曲「FIVE」をお聞きください
https://www.youtube.com/watch?v=ZtvdyYxzK1g&pp=ygUPYmlsbCBldmFucyBmaXZl
後の名声を際立たせるため、このデビュー盤がたった800枚しか売れなかった、というエピソードがよく紹介されるのですが、当時の新人ジャズミュージシャンのアルバムは、初回プレス1,000枚くらいが相場だったらしく、彼の作品が特別売れなかったというわけではないそうです。
この「FIVE」はタイトル通り、4拍5連、3拍4連を駆使した変則的な曲ですが、ちゃんとスウィングしているし、まったく小難しくなくて、楽しくて、美しいですよね。
1959年にマイルズ・デイヴィスに請われて、ビルは彼のバンドに入りましたが、活動期間はたった7ヶ月でした。黒人主体のジャズプレイヤーの社会のなかで、白人であることがプレッシャーになったと言われています。特にジョン・コルトレーンとはバチバチやりあったみたいですが、肌の色が問題だったのか、単なる人としての相性の悪さが原因だったか、両論あります。しかも、ビルには麻薬という問題もありました。
ただ、マイルズのグループを去ったことで、彼は花形ホーンプレイヤーを支えるサイドマンという立ち位置から脱皮し、さまざまな新しい試みを模索していきます。たとえば、60年代前半当時、ジャズではまだめずらしかった「多重録音」の技法を取り入れた作品を完成させました。
では、1963年のアルバム『自己との対話(Conversations with Myself)』から「スパルタカス 愛のテーマ」を聞いてください。
https://www.youtube.com/watch?v=2fdV_C3YGIs&pp=ygUfYmlsbCBldmFucyBzcGFydGFjdXMgbG92ZSB0aGVtZQ%3D%3D
スタンリー・キューブリック監督の映画『スパルタカス』のサウンドトラックのカバーで、「スパルタカス 愛のテーマ」でした。こういう録音テクニックを使うことを邪道と見なすジャズファンもいたそうですが、結果的にこのアルバムで、ビルははじめてのグラミー賞を獲得します。
また、ソロやトリオだけでなく、さまざまな演奏家や歌手たちと共作でアルバムを出しています。先ごろ96歳で亡くなった歌手のトニー・ベネットとも1975年にアルバムを出しました。次はその中からエヴァンスの代表曲「ワルツ・フォー・デビー」を歌詞付きのヴァージョンで聞いてください。
https://www.youtube.com/watch?v=0EQNNVb2_Yw&list=PLbnJYtsl3xpjTrYCfvEpvQXvx0QDpLMgc&index=7
アルバム「ザ・トニー・ベネット・ビル・エヴァンス・アルバム」から「ワルツ・フォー・デビー」でした。
最後におかけしたいのは、ビル・エヴァンスの隠れた名曲のひとつ「Time Remembered」です。
いろんな時代の、いろんなメンバーで録音された音源がたくさん残っているのですが、今日かけたいのは1963年5月にハリウッドで録音されたビル・エヴァンス・トリオ───ベースがチャック・イスラエル、ドラムがラリー・バンカーの演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=BK52N97XLPs
実は、先日お亡くなりになった坂本龍一さんが、自分の葬儀で流して欲しい曲のプレイリストを作っていた、という話はご存じの方も多いと思います。
https://open.spotify.com/playlist/31OIme0YdF4ORWvEdTyE6V?si=2365770a5d0b43cf
https://open.spotify.com/playlist/31OIme0YdF4ORWvEdTyE6V?si=2365770a5d0b43cf
バッハやエリック・サティ、ドビュッシーといった選曲のなかに、たった一曲だけジャズが入っていて、それがエヴァンスの「Time Remembered」の、まさにこのテイクだったんです。
教授にはモダン・ジャズとはあえて距離を取っていたフシがあり、ダイレクトにジャズ的な要素を持ち込んだ作品というのは非常に少ないのですが、ビル・エヴァンスは教授と同じく、フランスの近代音楽からの影響というバックグラウンドもあったことで、別枠的に好きだったみたいです。しかしながら、数多ある録音の中から、どういう理由でこのヴァージョンを選んだかは、その答えを永遠に聞くことはできないんですけどね。
結局、1980年9月15日に51歳の若さでこの世を去ってしまったビル。時代やジャンルを超えて多くの人達から賛辞を寄せられるような名曲・名演を残してきた天才が、どうして麻薬に溺れ、命を縮めるようなことをしたのか───才能を持つものゆえの不幸というものが、そこにはあったんでしょうけど、ただ、人生は短くとも、芸術は長し、ですからね。これからもビル・エヴァンスの奏でてきた音楽は永遠に聞き続けられていくと思います。
AKIRA MIZUMOTO "A.M." (LP)発売のお知らせ
2002年にリリースしたぼくのアルバム『A.M.』。3月に出たEP7"『Sam The Samba Man / Fairground』に続いて、LPが発売されることになりました。
思い起こせば昨年(2022年)のちょうど今頃、トランソニック・レコードの永田一直くんと約10年ぶりに再会。ひさしぶりに酒を飲んだ席で、DOMMUNEでの記念番組の話が持ち上がり、永田くんや宇川直宏さんほか、いろんな方の尽力で10月11日に生配信。
https://www.dommune.com/streamings/2022/101101/
その放送直後、ディスクユニオンのレーベル"URBAN DISCOS"の鈴木さんからEP化を持ちかけられ、それを足がかりに、今回のLP化が決定しました(鈴木さんはDOMMUNEの番組のことは知らなかったそうですが・笑)。
実はこれまでも、10周年、15周年……という大きな区切りが来るたび、『A.M.』のLP化というのは常に課題としてあって、自分から動いてみたこともあるのですが、いろんな壁があって実現しなかった、という歴史があります。20周年を迎えた去年にいたっては、自力で何かするという発想さえ、なにひとつ持っていませんでした。
サブスクやデジタルでの販売を数年前に開始し、音源そのものはいつでも気軽に聴いていただけるようにしましたが、伊藤桂司さんに作っていただいたアートワークをLPサイズで手にしたい、という思いはそれでもずっと持ち続けていたのです。
今回、その念願が叶ったうえ、伊藤さんと相談の結果、CDとまたひと味違った形で、LPならではのデザインにお色直しすることができたのは感無量です。
そして、レコード針が手に入るかぎり、永遠に聞き続けることのできるアナログレコードというフォーマットで、ぼくの宝物である『A.M.』をみなさんと共有できるのは、嬉しくて仕方ありません。
発売は11月3日───いわゆる「レコードの日」に発売されるタイトルのひとつとして、名を連ねます。
こちらのページにリリースの詳細は詳しくまとめられていますので、ぜひお目通しを。
https://diskunion.net/clubt/ct/detail/1008681166
毎年「レコードの日」や「RECORD STORE DAYS」のおしらせを目にするたび、小さく歯ぎしりしていましたが、これでその呪縛からも解き放たれます(笑)。
よかったらぜひお近くのレコード屋で手に取っていただき、ご購入いただけるとうれしいです。どうぞよろしくお願いします。
最後に、共同プロデューサーの矢野博康くん、オリジナルリリース時のレーベルプロデューサーだった永田一直くん、そして、アルバムに参加してくださったすべてのヴォーカリスト、ミュージシャン、デザイナー、スタッフの方々にあらためて感謝を。
ほんとうにどうもありがとうございました。
武田百合子さんについて知っていることを話そう。
2023年7月23日(日)
武田百合子『富士日記』について知っていることを話そう。
場所:blackbird books
*大阪府豊中市寺内2-12-1 緑地ハッピーハイツ1F
昭和を代表する小説家・武田泰淳の妻、武田百合子。夫や長女・花とともに過ごした富士山麓での別荘生活を13年間にわたって綴った『富士日記』(1977年)で文壇デビューをしました。
〈天衣無縫〉〈天性の文章家〉と賞賛される彼女のエッセイは、現在もなお新しい読者を獲得し続けています。そんな『富士日記』を元に、あらんかぎりの知識を投入して解説する書籍『YURIKO TAIJUN HANA 武田百合子『富士日記』の4426日』全3巻を完結させた編集者の水本アキラが、貴重な映像コレクション、音声素材などを駆使しながら、武田百合子ワールドの魅力を語り尽くすイヴェントです。まだ一冊も彼女の書籍を読んだことのないあなたもお気軽にご参加ください。
時間:19時より
参加費:1,500円
ご予約&お問い合わせ:
blackbird books
Tel 06-7173-9286
http://free.blackbirdbooks.jp/event/2864.html
https://goo.gl/maps/VM4Gvgiw2CuGajkH8
ハッピーエンドが書けるまで。at REBEL BOOKS @高崎
2023年6月16日(金)
ハッピーエンドが書けるまで。
〜日記について考えるとき、私の語ること〜
日記文学の傑作、武田百合子の『富士日記』をとことんまで読み解いた著書『YURIKO TAIJUN HANA 武田百合子『富士日記の』4426日』の第3巻(最終巻)発売を記念して、殿山泰司、つげ義春、和田誠、アンディ・ウォーホルなど、ぼくのおすすめの《日記》本を紹介しながら、日記をとおして日々を綴ること、またそれを読むことについて、REBEL BOOKS店主の荻原貴男さんと語ってみたいと思います。
なお『YURIKO TAIJUN HANA 武田百合子『富士日記の』4426日』第3巻は本イヴェントが初売りとなります。
開場:18時半 / 開演:19時
料金:1,500円
予約:件名を「6/16 水本アキラ申し込み」として、お名前を書き、letter@rebelbooks.jp にメールをお送りください。
定員:20名
https://goo.gl/maps/W5G7T6HL2bhDX3DB7
YURIKO TAIJUN HANA 武田百合子『富士日記』の4426日 VOL.3 発売のお知らせ。
既刊①②も含めて、お取り扱いいただいている書店は下記のとおりです。
BOOKNERD(盛岡)
ボタン(仙台)
REBEL BOOKS(高崎)
utlecht now idea(神宮前)
SPBS本店(渋谷)
日記屋 月日(下北沢)
本屋B&B(下北沢)
古書コンコ堂(阿佐ヶ谷)
Title(荻窪)
museum shop T(国立)
カクカクブックス(各務原)
ON READING(名古屋)
誠光社(京都)
blackbird books(大阪)
奈良 蔦屋書店(奈良)
1003(神戸)
本の栞(神戸)
本屋ルヌガンガ(高松)
本の轍(松山)
日田リベルテ(日田)
MINOU BOOKS(うきは&久留米)
在庫の状況は各店舗にお問い合わせください。
またぼくのウェブストアからの直販は下記リンクにて。
こちらからご注文の方で、ご希望があればサインも添えています。
ぜひご利用ください。
https://akiramizumoto.stores.jp/items/6470ab37f3e1680030df1062
スナック馬場12周年イヴェント @下北沢・LIVEHAUS
2023年6月14日(水)
スナック馬場12周年記念イヴェント @下北沢・LIVEHAUS
東京都世田谷区北沢2丁目14-2 JOW3ビル地下1階
出演 : 常盤響、水本アキラ、長谷川陽平、長谷川正樹、馬場正道
時間:23:30- ALL NIGHT
料金 : 1,000円
2011年に開店したスナック馬場がめでたく12周年を迎えました。ぼくも松山に引っ越す前は、何度かイヴェントをやらせてもらったことがありますが、タイミングよく東京に行く機会があって、今回のアニヴァーサリー・イヴェントに出演します。平日のオールナイトということで、遊びに来られるのはガッツのある方ばかりだと思いますが(笑)、こんな濃いDJたちが集まることもめったにないですし、有給でも取って遊びに来てくださいね。
<TIME TABLE>
23:30-23:55 馬場正道
23:55-24:20 長谷川陽平
24:20-24:45 常盤響
24:45-1:10 水本アキラ
1:10-1:35 長谷川正樹
1:35-2:15 長谷川陽平
2:15-2:55 常盤響
2:55-3:35 水本アキラ
3:35-4:15 馬場正道
4:15-4:55 長谷川正樹
4:55- B2B