11月1日(日) (not) Lost and Found...what??
かけがえのない存在を失った主人公が、さまざまな艱難辛苦を乗り越えた末、新しい何かを見つけ出す───つまり、喪失と発見(Lost & Found)についての物語は、ギルガメシュ叙事詩にはじまり『鬼滅の刃』からフジテレビ『ザ・ノンフィクション』に至るまで、多くの人々に求められてきました。
その一方で、もともと何も失っていなかった人が、自分は何も失っていなかった───という事実を《再発見》する物語からは、いったい何を得ればいいんでしょう?
ソフィア・コッポラ『オン・ザ・ロック』をAppleTV+で観ながら、そんなことをつい考えてしまいました。
なんだろうな……シティホテルやオフィスビルのエレベーターの中で、聴こえるか聴こえないかくらいの音量で流されているBGM、歌のない音楽があるじゃないですか。ほんと、あんな感じの作品です。
11月2日(月) MORE FEATURING
先週土曜に更新したTHINK TWICE RADIO VOL.6は、音質向上の効果もあってか、非常に好評です。
ただ、新エピソードをアップしたそばから〈FEATURING〉というテーマにぴったりな新譜がリリースされ、がっかり。すべてがもう一日ズレてたら!
───というのも、シカゴ・インディーシーンの重鎮、Bill Callahan and Bonnie “Prince” Billyが、5組のアーティストをそれぞれフィーチャリングした5枚のカヴァーシングルを連続発表したんですよ。
https://billcallahanbonnieprincebilly.bandcamp.com/music
以下、各カヴァーシングルの元曲を列記。
https://www.youtube.com/watch?v=GfZMHhUqVhc
キャット・スティーブンス「Blackness of the Night」
https://www.youtube.com/watch?v=lch1Qur-0k8
ハンク・ウィリアムス「OD'd in Denver」
https://www.youtube.com/watch?v=paHP7rHhR_w
デイヴ・リッチ「I've Made Up My Mind」
https://www.youtube.com/watch?v=wruiZceMJSk
ヘザー・サマーズ「Red Tailed Hawk」
いずれも彼らが取り上げなければ、出会いもしなかったようなカントリー/ゴスペル/フォークの佳曲ばかりですが、言葉は悪いけど、ちょっと地味。
しかし、ぼくがポッドキャストを録音していたちょうどその日に5枚目のシングルがリリースされたのが、なんとハイ・ラマズのショーン・オヘイガンをフィーチャリングした、ビリー・アイリッシュのカヴァーでした。
https://www.youtube.com/watch?v=Vw8Lp46ov5w
これが元曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=DinwMVo3Tmk
ビリー・アイリッシュの実体験───片思いの相手に見向きもされず、彼のことをゲイだと思いこんで忘れようとしたところ、後日、ほんとうにゲイだと判明した───に基づく失恋ソングなのですが、ショーン・オヘイガンが作ったモダンなR&B風トラックの上で50歳代のおじさんたちが歌い上げると、同じ歌がまったく別の風合いを醸し出されていますね。