THINK TWICE 20220123-0129

1月23日(日) 大分DAY3

生憎の大雨。

ジョイフルで雑なモーニングセットを食べたあと、リベルテへ向かう。疲れきった顔の原くんが出てきた。昨夜、ぼくと別れたあと、結局4時まで飲んで、そのまま飲み屋の2階で寝たらしい。最高だね。

精算をしてもらう。やはり本が予想以上の売れ行き。ありがたい。

そして、今回の旅の大きな目的だった皿山へ向かう。全国に名を轟かせる小鹿田焼の産地だが、道中は驚くほど寂しい。2020年7月に起きた豪雨災害で、日田も甚大な被害を被った。街の中にいるときには、その影響を感じることはほぼ無かったけれど、少し車を走らせるだけで、ブルーシートで養生している家屋、のり面が崩れて剥き出しになった山肌、そして無数の工事現場を見た。

リベルテから約30分ほどのドライブで到着。ぼくらはひとまず陶芸館の駐車場に車を停め、小鹿田焼の歴史や資料展示をざっと見学。

集落のまんなかを流れる川沿いのなだらかな坂道に沿って、窯元が工房兼ショップを運営している。2017年に九州北部を襲った水害の影響で、半分以上の唐臼が破壊され、陶土も流出したりと大ダメージを受けた。もともと10軒残っていた窯元のうち、数年前に1軒は廃業し、現在は9軒になっている。

同行の友人は陶芸館から目と鼻の先にある「黒木史人窯」に腰を据え、動かないと決めたようだ。とりあえずすべての窯を回ろうと、ぼくひとりで歩く。全部見回ってもたいした距離ではないけれど、雨はどんどん強くなり、靴下が徐々にびしょびしょになっていく。

それにしても、どこの窯も商売っ気がまったくない。観光客が出歩きにくい状況だし、それに加えて、この悪天候だ。地区内で見かけたのも、ほんの数組だった。だが、そもそもショップには客どころかスタッフがいない。昼時だったので、ごはんでも食べていたのかもしれないが。ただ、買うものを決めて、大きな声を出しても、誰一人出てこないのはどういうことだ。おまけに不在時用のチャイムを付けているところも1軒だけ。そのせいでぼくは2枚のお皿を買い損なった(笑)。

「黒木史人窯」に戻ると、友人が窯元の奥さんにお茶を呼ばれていた。説明がちょっと複雑になるが───ぼくの友人の日田在住の友人は地元高校のボート部のコーチをしている。で、この窯の息子さんがたまたまボート部の教え子で、今春に高校を卒業次第、跡取りとしてお父さんの仕事をサポートし、ゆくゆくはここを継ぐことになっている。だからもし皿山に行くなら、そこを訪ねればよかろう、と紹介してくれていたのだ。

で、実は行ってみて気づいたのだが、「黒木史人窯」は『ブラタモリ』の日田・小鹿田の特集回で、タモリさんの訪問先として選ばれていたところだった。ロケの裏話、小鹿田焼の歴史やさまざまな興味深いエピソードなどをお話好きの奥さんからたっぷり伺って、思いがけず充実した時間になった。

皿山を後にして、例の友人の友人と合流すべく、昼ごはんの店に移動。夜明という地区にある蕎麦と地鶏料理の店。炭火焼きと鶏の炊き込みご飯、蕎麦が付いて1,800円。おまけに友人の友人がここの常連さんということで、これもサーヴィス……と、デザートのプリンかなにかを差し出すようにドンッとテーブルに置かれたのが、生のイノシシ肉。実はイノシシを食べたのは生まれてはじめて。炭火で炙って食べたが、ちょうど豚肉と牛肉の中間のような感じで美味しい。一昨日の食用蛙といい、大分に来てからというもの、齢50オーヴァーにして、いろんな舌上の童貞を切れたのがうれし恥ずかしい。

食後、別府・大分方面に戻るのではなく、いったん福岡県に入り、朝倉市にある「林田温泉」へ行く。温泉に浸かれるなら、ぬる湯が好み……とリクエストを伝えていたら、友人の友人がそれならあそこがベスト、と選んでくれた温泉。周囲はほとんど住宅街。お客さんも地元の家族連れが多く、観光客はまず来ないようなところだったが、感染者の急拡大を受けて、翌日から臨時休業が決まっていた。

アルカリ性単純泉。たしかPh8.5で、源泉で43度くらい。水で埋めたりしてない分、トロトロ感が破格。四国には硫黄臭の強い温泉がほとんど無いので、ニオイでも旅行気分を味わえた。

友人の友人に別れを告げ、杷木ICから一気に大分市へ。そして佐賀関から三崎港にふたたびフェリーで渡り、自宅に戻ったのは午後10時頃。


1月24日(月) 梱包ザーと呼ばれて。

今日は旅の疲れを癒やしながら、ふたたび梱包祭り。

相変わらずひっきりなしに来るウェブショップからの注文と共に、取扱店向けの荷物を本格的に梱包する。

東京周辺のお店はぼくの仕事を手伝ってくれている信濃川あひること鷲尾圭くんのところにまとめて送り、それを彼が配本してくれているので、あひる君のところにはダンボールでまとめてドカンと。そのほか、地方のほとんどのお店は小口注文なので、レターパックプラスで送ることが多い。レターパックプラスは厚みの制限が無いので、箱状にうまく折りたたむと15、6冊までは余裕で梱包可能。

最初はネットでコツを学んで、そのとおりに真似してやっていたが、だんだん要領が掴めてきて、緩衝材を入れずにうまく包む方法が見つかる。こういう工夫を楽しく出来る性格で良かった。

それにしても、予想以上の売れ行きだ。予約注文のときはVOL.2だけの注文が多かったが、時間とともに2冊セットの注文が増えてきた。"FOUR COUNTRY"のZINEとセットを買ってくれる人もいる。その反対に、VOL.1だけ、というオーダーは少ない。日田のイヴェントの時もそうだった。一冊1,500円、①②をセットにして消費税まで入れると3,300円もするので、正直ハードルは高いよな〜、なんて出す前は考えていたけれど、まるで違う。

ぼくのような自由業者にとって、思考力、経験、直感や想像力、風を読む力というのは大事な武器だと思う。このnoteに付けた"THINK TWICE"というタイトルにもそんな気持ちを込めている。

でも絶対に過信してはいけないということ。ただ何も考えずに空に投げて、どこにどこまで飛んでいくのか、見守ることもすごく大事なのだ。世界は自分の想像よりもずっとおもしろい。

1月26日(水) 今でしょ。

というわけで、前回も取り扱ってくださった書店だけではなく、新しくさまざまなお店にも販売をご協力いただくことになり、手持ちの在庫もほんとうにわずかになってきた。一部のお店には発売3日で追加納品した。

正直、こんな展開は想像していなかった。足りなくなれば刷ればいいか……くらいの気持ちで初版の冊数もおそるおそる決めた。なにせ①と②の2冊を同時に印刷する必要があるので、印刷代も倍かかる。しかし、どう考えても、今後の事を考えたら、最低でも初版と同じくらい重版しておかないと厳しそうだ。

まだ発売してから一週間も経っていない。売上の回収も来月末まで待たなくてはならない……うーむ。

友達にチラッと話すと「何千、何万みたいな部数じゃないでしょ? 待っててくれる人がいるんだからチャチャッとやんなよ!」と活を入れられる。はい、そのとおりです。

しいたけ占いにも今週のかに座は〈「強気&強気」の赤が出ています。〉〈今のあなたは「待ち時」ではなく、「攻め時」です。楽しむことも、面倒くさいことも、まとめて面倒見てあげてください。「私の生き様をよく見ておけよ!」と、いざ進軍です〉って書いてたしな……。

しかも今日は一粒万倍日と大安の重なるスーパーラッキーデイ。こういうときだけ軽くスピるぼくとしては「やるなら今しかねえ」(長渕剛「西新宿の親父の唄」)。

再注文の手続きと奥付などのデータ修正をし、今日中に済ませようとバリバリ働く。そして日が変わる前に片付けた。偉いぞ。


1月28日(金) タイムシャワーに打たれて

全国のさまざまなお店にぼくの本が届き、SNSなどで発信してくださることで、サイン入りの書籍を求めてくださる方のオーダーや、また、それを見たご新規のお店の方からの問い合わせも来るようになった。これもまたひとつのシャワー効果のようなものだろうか。

ご新規の方からのメールには「①のときも気になっていたのだが、②のお知らせを見かけてご連絡しました」と書き添えられていることが多い。

たしかに①は誠光社とユトレヒトが共催したイヴェントの一環で作ったから、その2店が先行販売したあと、余った在庫をいろんな店に声をかけて置いていただいた。それゆえ気にはなっても、連絡まで至らなかったのかもしれない。

①の手応えがそれなりにあったので、続編を出したのだろう……と思われた人もいらっしゃるだろうし、それもわからないでもない。ぼくだって、①が押し入れに山積みになっていたら、②を出すなんて間違っても考えなかっただろうから(笑)。

買ってくださらない理由はたったひとつで「興味がないから」ということに尽きるだろう。その反対に、手にとってくださった方々の理由はもっとたくさんヴァリエーションがあるはずだ。著者としてはおひとりおひとりに聞いてまわりたいところだけれど、もちろんそれは叶わない。

あとはまあ早くこの状況が少しでも落ち着いて、今回の出版で新しい土地に伸びた縁をたどって、早く旅に行きたい。そのためにぼくは本を書いているようなものだから。


1月29日(土) ある種、縄文的。

https://amass.jp/154757/

初期のUFCでインタビュアーを務めていたジョー・ローガン。こんな転身を遂げてたとは知らなかった。しかも、Spotifyが一昨年、彼のポッドキャストと契約するために支払ったのはなんと1億ドルだとか。

https://amass.jp/154827/

ただ、これだけ社会が高度かつ複雑にグローバル化して、真偽不明の情報が一瞬で拡散可能になってくると、英語力が低い日本人にとって最大の"ファクターX"とは、言語的バリアなんじゃないか、とさえ思える。